2017年2月8日水曜日

Thelonious Monk at the Five Spot大全(4) Five Spot 1957 with Coltrane

Thelonious Monk Quartet with John Coltrane/COMPLETE LIVE AT THE FIVE SPOT 1958 [Gambit] rec. 1957-58, pub. 2006


Cover Design : Twins

1957/07?, Five Spot Cafe, NYC
JC (ts), TM (p), Wilbur Ware (b) ?, Shadow Wilson (ds) ?

06. Ruby My Dear
07. Nutty

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本盤のメインは、Blue Noteが発掘したFive Spot 1958 with Coltraneの5曲をリマスターしたもの。

問題のFive Spot 1957の発掘曲(と推測されるの)は、bonus tracksの2曲だ。

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これは、CD での表示では1958/09/11の残りテープとされているが、dsに注目して聴いてみると、1958年のds、すなわちRoy Haynesではないのだ。Haynes特有の、細かく刻むスネアが全く聞こえない。

後述のCarnegieにおけるNuttyを聴いてみると、Shadow Wilsonは「チーチッキ、チーチッキ」と、定石通りのシャッフルを刻んでいる。このFive SpotのNuttyも同じだ。少なくともRoy Haynesではない。Shadow Wilsonとみて間違いないだろう。

bはWareかAbdul-Malikかは自分にはわからなかったが、Wareとされている。いずれにせよ、dsがWilsonであるならば、それは1957年であるのは確実。

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これは、一説ではMonkの奥さんNellieさんが録音したものだという。

初出は、Monkの息子T.S. Monkのサイト

・T.S. Monk/MONKZONE.com(2001-)
http://www.monkzone.com/index.htm

これをGambitがさっそくパクって商品化。「協力 : T.S.Monk」といったクレジットは一切ないから、まさにパクリだ。

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Websiteでの発表時点で、1958年の残りテープとされていたが、これも不可思議。

1958年のテープは、当時のColtraneの奥さんNaimaによる録音であるのは間違いない。それと同時にNellieさんも録音していた、とでも言うのだろうか?

第一このdsを聴けば、私のような素人でも1957年のShadow Wilsonであると気づく。T.S. Monkが気づかないはずない。また、Gambitのスタッフだって気づいているに決まってる。

Five Spot 1957であることを隠蔽しなきゃいけない事情があるようだ。

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後述するFive Spot 1958 with Charlie Rouse(という録音もあるのです)は、T.S. Monkの協力により一度発売されたものの、発売中止となった。

理由は、テープの出処がNicaさんだったためで、どうも著作隣接権が充分クリアできなかったと思われる。

この2曲も、実は元々の出処はNicaさんテープだったのかもしれない。真相はわかりませんがね。

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で、ようやく曲に行くのだが、実はあんまり面白くない。

ここで聴かれるRuby, My DearとNuttyはMONK WITH COLTRANEでも録音されていた2曲。

どちらの曲でも、ソロも展開もよく似ている。時期が近い、すなわち1957年であるのは、ここからも推測可能。

ちょっと地味な2曲なので、もっと聴きたくなる!ああ。

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・J.C.トーマス・著, 武市好古・訳 (1975) 『コルトレーンの生涯』. 327pp. スイングジャーナル社, 東京.
← 英語原版 : J.C. Thomas (1975) CHASIN' THE TRANE : THE MUSIC AND MYSTIQUE OF JOHN COLTRANE. 252pp. Doubleday, Garden City(NY).
→ 再発 : (2002.10) 『コルトレーンの生涯 モダン・ジャズ 伝説の巨人』(学研M文庫). 476pp. 学研, 東京.

を読むと、Coltraneと奥さんのNaimaは、Five Spot 1957の間にもテープを回し、家に帰ってから二人で録音を聴いていた、という記述がある。

後に発掘された1958年のテープ以外にも、まだ他にテープがあるんじゃないか?

上記の2曲はそこから出てきたものの可能性もある。なんだか判じ物。そこがブートの面白いところでもある。

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また、1957年の演奏は2曲だけ出てきているが、ひょっとすると、1958年のレパートリーとは重複しない2曲だけが選ばれているのかもしれない。

その場合は、他にも出せるネタを誰かが持っているのかもしれない(といいなあ)。いやー、わからないんだけど、想像していくとちょっと楽しみになりますね。

Gambitは、Monk – Ellingtonの共演も発掘しているし、最近すごい活発だ。期待しましょう。

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さて、残念ながらほとんど録音が残っていない1957年のMonk – Coltrane Quartetだったが、2005年にとんでもないものが発掘される。

それが次回紹介するMONK WITH COLTRANE AT CARNEGIE HALL。Five Spot 1957へのファンの渇望を見事に満たしてくれた。

それは次回に。

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(追記)@2017/03/06

・Lewis Porter (ed.), Lewis Porter+Chris DeVito+David Wild+Yasuhiro Fujioka+ Wolf Schmaler (2008.3) THE JOHN COLTRANE REFERENCE. 848pp. Routledge, Oxford (UK).

によれば、1957年Five Spot Liveでは、Ware → Abdul – Malikの交代以外にもけっこう入れ替わりがあったらしい。

・07/18-07/末 JC (ts), TM (p), Wilbur Ware (b), Frankie Dunlop (ds)
・07/末-08/12 JC(ts), TM (p), WW (b), Shadow Wilson (ds)
・08/13-08/末 JC (ts), TM (p), Ahmed Abdul-Malik (b), SW (ds)

・09/05-09/10or11 JC (ts), TM (p), AAM (b), Philly Joe Jones (ds)
・09/11or12-11/06 JC (ts), TM (p), AAM (b), SW (ds)

・11/21-12/15 JC (ts), TM (p), AAM (b), SW (ds)
・12/16-12/26 JC (ts), TM (p), AAM (b), Kenny Dennis (ds)

Frankie DunlopがMonkのDiscographyに現れてくるのは1961年4~5月のヨーロッパ・ツアーからなのだが、1957年のFive Spotですでに共演していたとは知らなかった。Monkとの相性は抜群だから、MonkはDunlopを手に入れるまで4年も待ってたわけか。

1週間程度とはいえ、Philly Joe Jonesが叩いているのも面白い。相性はあまりいいとはいえないが。Philly Joeは1969年のParis Liveで久々の共演を果たすことになる。

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