2014年7月29日火曜日

音盤テルトン(4) MONTY ( ALEXANDER ) MEETS SLY AND ROBBIE - Old Wine in A New Bottle-その2

本エントリーは
stod phyogs 2014年7月29日火曜日 音盤テルトン(4) Old Wine in A New Bottle-その2
からの移籍です。日付は初出と同じです。

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えー、ここでようやくメンバーと曲名をあげておきます。

Monty Alexander/MONTY MEETS SLY AND ROBBIE [Telarc]


















1999/08 & 12, Conshohocken, PE
Monty Alexander (p,melodica), Robbie Shakespear (b), Sly Dunbar (ds,rhythm,prog), Handel Tucker (add key), Desmond Jones (ds fills), Steve Jankowski (tp), Jay Davidson (sax)

01. Chameleon
02. Monty's Groove
03. Soulful Strut  ┐
04. The In Crowd  ├ この流れがサイコー
05. Sidewinder    ┘
06. People Make the World Go 'Round
07. (Do the) Kool Step
08. Moanin'
09. Mercy, Mercy, Mercy
10. Hot Milk

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曲名を見てすぐわかる通り、これはMonty Alexander Plays Funky & Soul with Sly & Robbieです。1960年代(一部70年代)のファンキー、ソウルの名曲がズラリと並んでいます。この辺の俗っぽさは、また嫌う人がいるでしょうなあ。

もう、この辺はMontyの芸風と思ってあきらめて下さい。

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さて、まず1曲めはHancockのChameleon。「なんだよ、HEAD HUNTERSかよ!」と、さっそく脱落する人続出、でしょうか(笑)。

いきなり飛び出すタブラとスクラッチ(どちらもサンプリングくさいですが)。おもしろすぎ!だが、さらに去る人も・・・。

Slyのリズムはほとんど打ち込みです。Bill Laswellと知り合ってから(?)、Slyのドラムはどんどん打ち込みが増えてきましたが、本作ではほぼ全面打ち込み。あの豪快なドラムが聞けないのはちょっと残念ですが、Sly & RobbieはDubの人でもあるのですから、こういう小細工かました音作りもお手の物。

しかし、これも(自分の)サンプリングと思われるリムショットだけでも存在感充分なんだから、たいしたものです。

Robbieの方は、相変わらず地をはうようなベース・ラインを弾き続けます。鉄人ベース健在。

で、肝心のMontyはというと、かつてのバカテクは影を潜め、音は少なめ。まるでCount Basieかと思うくらい淡々と弾いていきます。これは意外。

でもこれがなかなかよい。バックがゴチャゴチャ小細工している時は、それにバカテクを被せる必要がないのをよく知っている。

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2曲めは自作のMonty's Groove。これも淡々と弾いていきます。

そして3~5曲めの怒涛の3連発が、本作の聴き所。

3曲め、Soulful Strut。これはYoung – Holt Unlimitedの1968年の大ヒット曲。と言われても、リアルタイムでは知らなくて、知ったのはカバーでした。

カバーしたのはStyle Councilとばかり思い込んでいたが、どうもSwing Out Sistersだったよう(どっちも一時期ハマったハマった)。こっちの曲名はAm I the Same Girl。というか、こっちが元曲で、それをインスト化して曲名をつけかえたのがSoulful Strut。

元曲が発表される前に、インスト版が発表されて大ヒット。それも、Young – Holt Unlimited自身は全然演奏していなかった、といういいかげんさ。

その辺の事情はこちらのサイトで知りました。

・SAX & BRASS magazine > コラム >塚本謙のFunk裏Recommend Disc > 2012年8月16日 真夏のシカゴ・ファンク:ザ・ヤング・ホルト・アンリミテッド編 今回の”裏”Recommend Disc 『Soulful Strut』 The Young-Holt Unlimited
http://rittor-music.jp/saxbrass/column/funkdisc/283

ゆったり弾くMontyのピアノが気持ちいい。これはもう曲の力に全面的に身を委ねた作戦勝ち。ジャズ的なスリルはほとんどありませんが、この辺まで聴くと「ああ、これは当たりだあ!」と宣言できます。

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4曲目はRamsey Lewisの大ヒット曲The In Crowd。こういう曲なら、Montyはお手の物。手数もちょっと増えています。本家のArgo盤もいいけど、本当に楽しい曲だと再認識できる名演。

すっとぼけた打ち込みリズムには、「馬鹿にすんなあ!」と怒り出す人もいそうだなあ。でも変にマッチしていていいんだよなあ。

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5曲目はLee Morganのこれも大ヒット曲Sidewinder。Montyは、これまた音数少なく進めていきます。この手のヒット曲というのは、本当に曲の力が強い。アドリブ・パートで小細工は必要ないのだ。

その辺は、大昔は馬鹿にしていたGrover Washington Jr.の聴き方がわかってから、理解できるようになりました。

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6曲目、StylisticsのPeople Make the World Go 'Roundをしっとりとこなした後、7曲目は自作の(Do the)Kool Step。

これが珍品。というのは、これは4ビートJazz。なんと、Robbie Shakespearの4ビート・ウォーキングが聴けるのです。

これ、なかなかよい。今までRobbieが参加したジャズ作で、こんな4ビートをこなしたことはあったんだろうか。あったら聴いてみたい。

そして、今後4ビート・ジャズに参加させてもみたい。もしかすると、最近4ビートやることが多いAnthony Jacksonみたいになるかもしれない。

さらに驚くことに、Robbieはベース・ソロをとるのですよ。20分位ある長い曲でもリズム・パターンをほとんど崩さないあのRobbieが!

おそらく「これはお遊び」と割りきっているのでしょう。曲はRobbieのベース・ソロでフェイドアウト。しかし、もっと聴いていたかった。

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8曲目はBobby Timmons(+Art Blakey & Jazz Messengers)のMoanin'。これも打ち込みリズムがふざけていて、怒り出す人いそうだなあ。Montyはやはり淡々と弾いていきます。完全にSly & Robbieの音作りに乗っかる作戦。それにしても、この三人相性いい!

9曲目はJoe Zawinul(+Cannonball Adderley)のMercy, Mercy, Mercy。ここでようやくレゲエになります。ああ、Mercy, Mercy, Mercyがこんなにレゲエにぴったりとは、目からウロコ。実に気持ちいい。

最後の10曲目は、Jackie MittoのHot Milk。これはReggae以前のJamaicaのヒット曲(1968年)。この辺は、3人共青春時代の思い出の曲なのでしょう。

ここではMontyはAugustus PabloばりにMelodica(注)を吹きます。エンディングにふさわしい、いい演奏です。

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この作品を「傑作」とする人はまずいないでしょう。眉をひそめる人の方が多いかも。

かといって「珍品」、「駄作」で片付ける作品でもない。事実、私はたいそう楽しむことができましたし。

Monty Alexanderはここでは特に変わったことはしておらず、むしろかつてより音数を減らし、一歩引いた立場でSly & Robbieの音作りに身を委ねています。主役なのに。

言い換えれば、リラックスしている、あるいは、二人を信頼しきっている、という気もします。

この作品は、言うなればSly & Robbieのプロデュースの勝利。結構スカスカながらも面白い音を作りこんだ上に、Monty Alexanderをお招きして、わりと気楽に弾いてもらい、結果心地よい作品になっている、という。こういう発想は、ジャズ屋さんからはあまり出てこないような気がします。

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この作品は、マンネリ化してレコーディングもなくなり、くすぶっているベテラン・ミュージシャンにとって、新しい展開を探るヒントになるかもしれません。

本人は特に変わらなくとも、これまでなかったようなシチュエーションに身を置いてみると、かなりおもしろいものが生まれる可能性があります。

考えてみると、Miles Davisの作品の多くはこの方法論で作られているのに気づきます。

あと、思いつくところでは、ちょっと聴いただけだが、Ron CarterがMC Solaarとやった曲はかなりカッコよかった。その路線はその後一切ないのは残念だけど。

Montyが幸運だったのは、Sly & Robbieという気の合う仲間(と私は思う)を見つけられたことでしょう。まず、よい仲間、プロデューサーを見つけるのが第一でしょうね。それが大変なんでしょうが。

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なお、この3人は、Skaの巨人Ernest Ranglin (g)を加えた4人で2011年11月に来日しています。

そのステージの様子は、

・SMASHING MAG > ? >アーネスト・ラングリン (Ernest Ranglin) モンティ・アレキサンダー(Monty Alexander)& スライ&ロビー(Sly & Robbie) @ コットン・クラブ 2011.11.03 
http://www.smashingmag.com/jp/archives/26717
・YouTube > Jamaica Jazz feat. ERNEST RANGLIN, MONTY ALEXANDER and SLY & ROBBIE : Cotton Club 2011/11/2 (2011/11/03 uploaded)
https://www.youtube.com/watch?v=iIG9k6FYccE

で、その一端を知ることができます。

また、Monty AlexanderとErnest Ranglinは、

Monty Alexander – Ernest Ranglin/ROCKSTEADY [Telarc](2004)

という共作もリリースしています。Montyのジャマイカ回帰路線は、今も続いているようですが、私ごときではとても追いきれませんね。

というわけで、ようやく終わりです。

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(注)

MelodicaとPianicaはどうちがうの?一般には鍵盤ハーモニカと呼ばれる楽器ですが、ほぼ同じです。ヤマハの製品名が「Pianica」、Hohnerの製品名が「Melodica」。

どちらも鍵盤のボディにマウスピースを突っ込んで、息を吹き入れて鍵盤を弾く、というシステムは同じ。ただしPianicaは直にマウスピースを突っ込むよりも、蛇腹のホースを付けその先にマウスピースをつけるケースが多いようです。その辺が違い。

参考:

・ウィキペディア(日本語版) > 鍵盤ハーモニカ (最終更新 2014年7月16日 (水) 12:54)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8D%B5%E7%9B%A4%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%AB

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